ビーチサンダルの君に恋した
「君は本当に、いつも笑顔なんだね」とレ二ーに言った。「それに比べ・・・」と、あのタレントのSのことを口に出した。レ二ーは微笑したまま、「それって、もしかしたら履きもののせいかも」と言った。
「履きもの?」と僕。レ二ーはうなずいた。ゆったりとのばしている自分の足を見た。彼女が履いているのは、ビーチサンダル。Opのロゴとハイビスカスの花柄がついたビーチサンダルだった。
考えてみれば、彼女がビーチサンダル以外のものを履いているのを見たことがない。車を運転する。レストランやホテルのロビーに入る。すべてビーチサンダルだった。
「ある医者に言わせると、革靴やヒールの靴を履いて生活していると、体や心にストレスがたまるんですって」とレニー。医学部の学生らしいことを言った。
(喜多嶋隆「ビーチサンダルの君に恋した」)
Tシャツに短パンという服装を数年来貫いていた僕であるが、最近はジャケットを着用することが多い。
なんのことはない。東京地裁に入る時に身分証明書をがさごそ探さなくてもバッジを見せるだけですむのは楽だといまさらながら気づいたからだ。
身分証明書というのは免許証と同じサイズで、顔写真入りで弁護士であることを証明するものなのだけれども、それをぐちゃっとポケットに入れて持ち歩いていると、なくしやすい。
現に、今年は二回も、しかも二回とも交付されたその日に失くした。
だから、サマージャケットを買って(これが意外と風通しがいいとこの年になって初めて知った。)、バッジを胸につけると、紛失のおそれなしということで、探さなくてよくて便利なのだ。
ただ、信条的な違和感というか、誰かを(誰を?)裏切った感がどうしてもぬぐえない。被告人が普段着なのに弁護人がスーツを着ているのはおかしい、とは今でも思うので、法廷ではわざわざ上着を脱ぐ。まあ、暑いから、というのもあるのだけれど。
そういうわけで、スラックスやジーパンにジャケットという姿が最近では多いのだけれど、靴は相変わらず、薫りのキツいサンダルだ。
昨年弁護士会の委員会で同じ部会だった先生が若くしてお亡くなりになられ、通夜のため革靴を履いたら、一時間もはいていないのに靴ずれがおきてしまった。